どうせ誰にも自分のことをわかってもらえない、と思える心理。これを癒やすためにはどうしてその心理が生まれたのか理解することからはじめるのが良いかもしれません。人によって様々なパターンはあるかと思いますが、重要なポイントは、人から分離することを自ら選択しているマインドを癒やすこと、かもしれません。
この心理は、自分は人とは違う、という感覚が強い人は感じやすいかもしれません。人にはそれぞれ個性があり、違いがあるのが当たり前なのだとしても、自分のことを本当に理解してもらえるというのは無理なんだろうなあ、というところから、孤独感を感じたり、人との間に強烈な距離感のようなものを感じる方もおられるかもしれません。
全部わかってもらうのは無理だとしても、完璧にわかってもらうのは無理だとしても、自分の本音の部分や、口にはしにくい想いの部分を誰かに受け止めてもらいたいという気持ちがでてくることもあるかもしれません。
ただ、どうせ私はわかってもらえない、と思えてくると、そこで、むなしさのようなものを感じられる方もおられるかもしれませんね。
「どうせ誰にもわかってもらえない」と思える時に感じる感情。心理学を語らせてもらうのなら、それはもしかしたら、幼い頃にできた心の傷のようなものが起因となって、ネガティブな感情を感じやすくなるような心理的なパターンが心の中にあるために、感じやすくなっている感情かもしれません。
良くあるパターンを例に出します。あくまで良くあるパターンあって、必ずしもこうなると言いたいわけではないのですが、私達は幼い頃、本当に無邪気なマインドでもって、親のことが大好きで、もっと自分のことを見てほしかったり、愛されたかったりしたかもしれません。ただ、親も人間なのでそのときに私達に対して十分にはしてあげられなかったり、全然こちらのことを見てくれなかったりすることもあったかもしれません。その中で、心が抱えている痛みとして、もうあなたには期待しない、という形で私達の方から親に対して距離をとったこともあったかもしれません。
心理的には自分から距離をとったのですが、感情としては、親との分離を感じます。そのときに、自分から分離したにもかかわらず、親から拒絶された、と感じるマインドが出てきます。
「私のことなんて全然わかってくれない」
「私のことを全然みてくれない」
「私の気持ちを全然うけとめてくれない」
「私を愛してくれない」
そういう心の痛みが、分離から生まれてきます。
これはあくまでパターンの1つであって、みなさんがそれぞれ抱えている心の状態というのは、千差万別ではあるのですが、これを基本的なパターンとして心の中を見ていくと、色々と見えてくるものもあります。
自分から分離して初めて、拒絶されていると感じる、という基本的な心の動きの流れがあります。
拒絶される、わかってもらえない、愛されなかった、といった心が感じる感情は、自分が何らかの被害を受けたという解釈をもとに生まれてきたりしますので、事実としては何かしらネガティブな出来事がきっかけで感じた感情かもしれません。ただ、心のなかで起こっていることは不思議なことに、まず、自分が分離することを選択してから、拒絶されたという感情が生まれる、といった構造になっています。
私もこれは心理学を学んでから知ったことで、学んだ最初のうちは、話を聞いても全然ピンと来ませんでしたし、「いやいや、逆でしょ」と思ってはきたのですが、長年やってると「あー、そういうことねー」とだんだんと気付かされてきた経緯もあり、こうして皆さんに語っているわけですが、ちょっと理解しにくいことかもしれませんね。
あまりここいらの心理学を長々と語るのも冗長なのでこのあたりにしておきつつ、一番大切なポイントは何かというとそれは、人から分離することを自ら選択している、という部分です。
自分を理解してくれないのは他人、他人は完璧にはコントロールできない、自分のことをわかってもらえないのは他人のせい、という思考を重ねた場合は結論として、その悩みは自分ではわりとどうしようもないもの、になり、「諦める」以外の選択肢が消えていきます。
ただ、人から分離することを選択していることから、悩みのタネとなる感情が生まれてきているのであれば、これを解決するのには色々とやりようがでてきます。
究極的には完璧に自分のことを理解してもらうというのは、無理があるものかもしれません。ただ、自分の心が本当に求めていることは、完璧に自分のことを理解してもらう、ということではなく、この分離したマインドに対しての解決が求められているのだとしたら、本当にやりたかったことは、ただ、人と深いところでつながりたかった、ということなのかもしれません。
この分離した感覚が強いと「完璧に私のことをわかってもらえないと、人とは深くつながれない」という思考がでてきたりします。理解は人と人とをつなげるための大切な要素ではありますが、そこに求められるのは完璧な理解というより、お互いに歩み寄ろうとする気持ち、です。人との相性とか、お互いの精神的な成長度とか、他にも色々な要素はあるものかもしれませんが、完璧な理解が必須かと言うと、、、、そこまでの重要性はないかもしれません。
理解してもらえないことで感じている心の痛み。人と分離していることで感じる感情であることから、ここではそれを分離感と書きますが、それは今感じている感情であると同時に、いつかどこかで感じたことのある古い分離感ともつながっていて、今はじめて感じた感情というより、その古い分離感を再体験しているかのような状態なのかもしれません。その分離感はある意味ではまだ癒やされていない心の傷のようなものになっていて、そこをケアしてあげることが求められているのかもしれません。
以下に古い感情をケアするための心理エクササイズを書きました。まずは一旦さらっと目を通してもらって、役立てそうならじっくりと時間をとって一度試してもらえれば、と思います。
分離感をケアするためのエクササイズ
人によって様々なパターンはあるものの、子供の頃にできた古い感情の代表的なものとして、両親に対して自分から距離をとることで生まれた分離感を取り扱ったエクササイズです。もし、両親とは別に、もっと強い分離感を感じている人がいるのであれば、エクササイズの「両親」の部分をその人に変更してエクササイズをすることも可能です。(例えば、幼い頃にすごく面倒をみてもらったおばあちゃんなど)
両親を拒絶したときのことを思い出す
私達は幼い頃、両親に対してべったりと甘えたい時期があったと思います。甘えたくても、親とずっと一緒にいたくても、甘えさせてもらえなかったときもあったと思います。親は忙しかったのかもしれません。忙しくはなかったとしても、心に余裕がなかったときもあったかもしれません。そこで冷たくされたように感じたこともあったかもしれません。
幼い頃、どれだけ冷たくされたとしても、親のことが大好きなのが子供の無邪気なマインドかもしれません。ただ、ずっとそんなマインドを持ち続けられるのかと言うと、どこかのタイミングで、もう相手に期待することをやめてしまうマインドも出てきたこともあったかもしれません。
「もういいよ」
そんなことを心のなかでつぶやきたくなるような気持ちが出てきたこともあったかもしれません。
そして、距離をとった。あるいは、親のことを拒絶した。そんな分離感が自分の心の中に生まれた、といったことを少しイメージしてみてください。
イメージワーク
両親を心のなかで思い浮かべてください。頭の中で、両親があなたから少し離れたところにいるイメージを持ってみてください。今から両親に対して心の中でコミュニケーションをとる、ということをやっていきます。その中で心の中で起こる感情の動きを、ただ、感じてもらえればと思います。
まず、両親に対して何か言いたいことはあるでしょうか?
文句でもいいですし、批判的な言葉でも良いです。何か怒っていることがあるなら、それを言う、でも良いです。直接面と向かっては相手に言えなかったことがあるのであれば、それを言う、でも良いです。両親に対して一言。言ったらイメージの中で両親に向かって一歩近づいてください。
次に、両親に対して何か謝りたいことがないか考えてみてください。内容は何でも良いです。両親に対して罪悪感を感じているような部分があるのなら、それを伝えてみてください。両親があなたに対して十分にしてあげられなかった部分はあったかもしれませんが、あなたも両親に対して十分ではなかったと感じられるような部分もあったかもしれません。両親に対して、イメージの中で謝りたいことを伝えてみてください。伝えたら、両親に向かって一歩近づいてください。
最後に、両親に対して何か感謝できることがないか考えてみてください。たくさんあるのなら、たくさん伝えてください。1つだけなら、その1つだけを伝えてください。両親に対して、イメージの中で感謝を伝えてみてください。伝えたら、両親に近づいてイメージの中でハグをしてください。
これでエクササイズは終わりです。エクササイズをやる前と比べて、なにか心が暖かくなるような感覚を感じてもらえればと思います。
最後に
理解してもらえないことで感じている心の痛み、をケアする方法について掘り下げて書きました。自分から拒絶することで生じた分離感があって心の痛みが生まれている、という視点は普通に暮らしている分にはあまり考えつかない発想かもしれませんが、心の中を掘り下げてみると、出てくる部分ではあります。そのあたりを深く掘り下げて理解していくのも時間がかかりますので、まずは難しいことはさておいて、何らかの形で感覚的に感じてもらえるようなエクササイズを用意してみました。
ただ、分離感を感じている、という以外に、「気持ちをわかってもらえない」というときにハマりがちな心理的な罠がいくつかありますので、最後にそのあたりを少し書きます。
理解してもらいたいことがあるとき、伝える、ということは大切なのですが、何も言わなくてもわかってもらいたいと思っているだけで相手には全然伝わっていなかったり、相手から理解をもらえるような表現やタイミングがわからなくて相手に全然伝わらない、といった、相手とのコミュニケーションに行き詰まりがあると、理解してもらいたいけど、理解してもらえない、という罠にハマることがあります。
「自分は他人に理解されない」ということを信じているような部分が心のなかにあると、その思考が現実を引き寄せて、理解してもらえないという体験が何度も引き寄せられて、結果的に、絶対に自分は理解してもらえない、という思考が強化される、という感じになることもあります。こういった思考の癖のようなものがあるために、誰も自分のことをわかってもらえないと思いこんでしまう、という罠にハマることもあります。もちろん完璧に理解してもらうこと、というレベルでは無理かもしれませんが、ある程度の理解なら得られるものを、「完璧じゃないならいらない」と自ら放り出してしまうパターンもあるかもしれません。完璧な理解を求める、というのも思考の癖として良くあるものかもしれません。
分離感を感じている、という以外に、こういった罠にハマっているような部分があるのなら、心のなかにあるその罠を作り出している部分を手放すことができるのなら、手放したほうが良いかもしれません。
以下にそのあたりを書いた記事がありますので、参考にしてもらえればと思います。