ケース その3 「封印していた過去の傷」
Client Profile 〜 クライアントのプロフィール 〜
陽子さん(仮名)は、30代後半の独身女性。仕事は順調で全く問題なし。 ただ、長年やっているので、少し飽きてきている状態。 恋愛では、付き合って1年半になる相手がいるが、あくまで遊びで、深くのめりこまないようにしている。
・カウンセリングの回数 ... 12回
・期間 ... 約9ヶ月
Counseling 〜 カウンセリング 〜
陽子さんは、以前カウンセリングを受けたことのある方からの紹介で、カウンセリングを受けにこられた方だった。
カウンセラー「今、付き合っている彼とのことで相談がある、ということでしたけれども。
         どんな感じでお話のほう、聞かせていただきましょうか?」
陽子さん「彼というか、1年半くらい前になるんですけれども、ちょっと、あるところで知り合った人で、
      ちょくちょく遊びに連れて行ってくれる人がいて・・・。
      その人とのことで、ちょっと、最近、なんというか、気持ちに、整理をつけたいと思っているんです。」
カウンセラー「どんな方なんですか?」
陽子さん「頭の回転が速くて、自分に自信がある人で・・・、尊敬できる人なんですけれども、
      ちょっと、なんというか、本心を見せてくれないようなところがある人です。」
カウンセラー「なるほど。気持ちの整理をつけたい、という話でしたけれども、整理できていないところ、
         という部分のお話を、聴かせていただいてもいいでしょうか?」
陽子さん「ちょっと、どこから話して良いのか・・・、長くなってしまいますけれども、いいですか?」
カウンセラー「いいですよ。」
ここで陽子さんの話を聴かせてもらうと、 どうも、相手の方には奥さんがおられ、不倫をされている、という話だった。
今までは、恋愛にも仕事にも特に悩みがない状態だった。 恋愛に関しては、相手とはつかず離れずの付き合いをしていて、 のめりこまないようにしていたし、結婚も考えられない。
この先ずっと一人で生きて、仕事をし続けることになるかもしれないが、 将来というものを考えることができない。 極端な話、いつ死んでもいい、と思うこともある。 日々、だらだら生きていたい、と思っている、という話だった。
ただ、あるとき、ふと急に淋しくなって、彼に多くを求めるような形になったときに、 彼から距離をとられてしまい、よけいに淋しくなって、 それをきっかけに、心身ともにぼろぼろになってしまった、とのことだった。
陽子さんにとって、何故急にこんな風になってしまったのかわからないけれども、 もともと男には期待しないって思っていたのにもかかわらず、 彼に期待をしてしまっている自分が嫌になっていたところで、 知り合いからここのカウンセリングの話を耳にして、 何かの解決の糸口になれば、と思い、カウンセリングを受けることにした、ということだった。
 
カウンセラー「男には期待しない、って思うようになったのは、
         いつぐらいからですか?」
陽子さん「いつぐらいからだと思います?」
カウンセラー「そうですね・・・・。予測するのはなかなか難しいですが、
         ただ、もちろん、過剰な期待というのは手放した方が、
         恋愛は上手くいきます。
         ここで、陽子さんの場合、期待しない、というのは、
         あてにしない、という意味で言われていると
         思ったんですね。
         今、お付き合いしている方のことを尊敬されている、
         ということも言われていましたけど、
         それと、あてにしない、っていうのが、
         なんだか、ミスマッチのような気がしています。
         彼のことは尊敬しますが、あてにはしていません、
         っていうことですよね?」
陽子さん「・・・はい。」
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カウンセラー「もし、そうであれば、今付き合っている彼、に何か問題があるわけではなくて、
         陽子さんの心の中で、男性に対して何か心理的な防衛をしている、ということだと思うんです。
         男性に対して、何か心理的なブロックのようなものがあるとしたら、何だと思いますか?」
陽子さん「う〜ん。難しいですね。」
カウンセラー「直感的に、今、陽子さん自身の中で、恋愛、というので、何か怖れがあるとしたら、何だと思いますか?」
陽子さん「なんだろ・・・・。昔、付き合っていた人がいて、その人は、結局、別の人と結婚したんですけれども、
      キレイに別れられなかったというか。
      私もその人に対しては、別れないでほしい、というので、取り乱したりもしたんで、
      あのときのことは、あんまり思い出したくないんですけれども、そこからかもしれません。」
カウンセラー「なるほど。陽子さんの中で、今、何でこんな風になってしまったのかわからない、
         という話があったと思いますけれども、
         なんだか、過去、取り乱したときの状態と、今の状態と比べて似ているようなところはないですか?
         もちろん、過去のほうが、もっと辛かった、というのはあるかもしれませんけれども。」
陽子さん「似てると思います。それが嫌なんです。」
カウンセラー「過去の傷、もし、それが心の中で大きな痛みとして残っているなら、
         それは、時を変えて、また、表に出てくることがあります。
         これは、恋愛に限らず、です。
         不思議なことに、心の中にある過去の傷、というのは、
         癒されるために、もう一度、問題として現実に出てくることがあります。
         もちろん、陽子さんにとっては、できれば、そのまま過去のものとして眠っておいて欲しい、
         パンドラの箱、のようなものかもしれません。
         ただ、これを仮に封印することに成功したとしても、また、時を変え、形を変えて、出てくる可能性は高いものです。
         そのたびに、過去の傷がうずいて、辛い想いをされることになるかもしれません。
         陽子さんが整理したいと言っていた話の根っこの部分って、ここにありませんか?」
陽子さん「・・・・・言われていることはわかるんですけど、
      今付き合っている人でも、同じようなことを感じているというのが、納得いかないというか。
      そのとき付き合っていた人ほど、好きじゃない、というか。そこまで、のめりこんでいないつもりなんです。」
 
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カウンセラー「もちろん、同じことにならないように、意識をされていたと
         思います。ただ、恋愛は感情でするものなので、
         どうしても、理屈通りにいかない部分が出てきます。
         恋愛では、相手のことが好きで、心理的な距離が
         近づいてくるにつれて、自分の中にある、
         心の問題がどんどん出てきます。
         もちろん、相手のことがそれほど好きじゃなくて、
         そこそこで付き合っていて、心理的に距離が開いていれば、
         それだけ、感情も心の動きも少ないですから、
         そういったことは減ります。
         ただ、陽子さんにとって、今、付き合っている人、
         ちょっと淋しくなったときに、彼に求めるように
         なった、という話があったと思います。
         そこがきっかけになって、今まで、心理的に距離を置いて
         いたものが、一歩近づいたことで、陽子さんのハートの
         中にある部分が出てきた、という風に思います。」
陽子さん「・・・・・やっぱり、それがいけなかったんですよね?」
 
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カウンセラー「ただ、もしかしたら、それは陽子さんにとって必要なこと、だったかもしれないですよ。
         もちろん、今は、過去の傷が出てきているので、辛さ、があると思います。
         ただ、もし、それが今、癒されるために出てきているのだとしたら、この部分、扱ってみませんか?」
陽子さん「はい。」
カウンセラー「そのときに付き合っていた彼の話を聞かせてもらっても良いですか?」
陽子さん「う〜ん・・・どこから話したらいいですか?」
カウンセラー「そうですね。まずは、彼がどんな人だったか、教えてもらっても良いですか?」
陽子さん「・・・・どういったらいいんでしょう。優しかったですね。
      私が付き合った中では、けっこう、カッコイイ方だったと思います。背が高くて。
      たぶん、けっこうもててたと思います。
      浮気が本気になって、向こうを選ばれた、一言でいっちゃうとそうだと思うんですけど。」
陽子さんの話によると、彼は、学生の頃から知っている人で、 知り合った頃からずっと好きだったけれども、 付き合いだしたのは、卒業後5年たってからのこと、ということだった。
付き合ったのは、5年程度。 仕事上の付き合いのあった女性と浮気をし、 しばらく、二股の状態が続いたが、 その後、全然、彼が浮気相手と別れようとしないことから、 陽子さんのほうから別れるという話をして、別れるようになった、 ということだった。
そのときのことを思い出すのは辛く、 もう、2度と、浮気をするような男とは付き合いたくない、 とのことだった。
カウンセラー「そのときに、もう2度と、人のことをここまで好きに
         ならないようにって心に鍵をかけてしまったの
         かもしれないですね。
         人を好きになるのが怖い、という感覚はないですか?」
陽子さん「あります。浮気をしない男の人を見分ける方法ってないですか?」
カウンセラー「そうですね・・・。
         いくつかポイントのようなものはあるかもしれませんが、
         はっきりと、これ、といえるものは、難しいかもしれません。
         ただ、男性は女性に対して、愛情やセクシーさを求めます。
         どちらかが満たされていなかったり、男性自身が浮気に
         走るような心の傷があると、浮気をしやすくなります。
         例えば、心の中に無価値感、自分は大した人間ではない、
         という思いがあって、それを補償するために、
         浮気をしたほうがかっこいい、多くの女性と恋愛関係を
         もっているほうがかっこいい、という風に思っているのなら、
         浮気をしやすくなる、かもしれません。」
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カウンセラー「ただ、しょっちゅう浮気しているような浮気性の人、と、一過性の浮気とは分けて考えたほうがいいかもしれません。
         彼の場合は、浮気性、というほどではなかったかもしれませんが、
         それだけに、陽子さんも、彼に浮気をされた、というので、びっくりした、というのはあったでしょうか?」
陽子さん「最初は、受け入れられなかったです。
      でも、ああ、他にもいたんだ・・・、っていうのは思いました。」
カウンセラー「ちょっと、教えて欲しいのですが、
         今、陽子さんにとって、彼に対しての執着、というのは残っていますか?」
陽子さん「まだ、あると思います。
      はぁ・・・。ごめんなさい。そこは、あんまり、はい。」
カウンセラー「陽子さんにとって、ほしいもの。
         それは、自分が愛する人に愛されるということだと思います。
         ただ、そこに行くために、陽子さんにとって、怖れ、のようなものが心理的なブロックになっています。
         そのブロックを溶かす鍵があるとしたら、彼に対する執着の部分にある、ということに、
         陽子さんは気付いていませんか?」
陽子さん「・・・・」
カウンセラー「陽子さん自身も気付いていると思います。ここを扱わないと、いけないって。
         今まで、後回しにしてきましたよね。
         浮気をしない男の人を見分ける方法。
         もし、もう自分のことを傷つけることのない人がいて、その人を愛することができるなら、
         そのときに、陽子さんは、パンドラの箱を空けることができるのかもしれません。
         ただ、100%安全って無いですから、現実の恋愛の中でここを扱うのはとてもリスクがあると思いませんか?
         この人なら大丈夫って陽子さんが思う人にそれをぶつけて、
         また裏切られたらって思ったら、もっと怖くないですか?
         カウンセリングの中でここを扱うのであれば、そのリスクは低いと思いますよ。
         もちろん、それでも、怖れ、は強く感じるとは思います。
         今も怖さ、のようなものは感じていますよね?」
陽子さん「はい。怖い・・・ですね。」
カウンセラー「陽子さんの中にある怖れ、を軽減するためにも、今から、私がどんな手法を使おうとしているのか、
         それをお伝えしますので、それを聞いた上で、やってもいいかどうか、決めてもらっても良いですか?」
陽子さん「はい。」
 
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カウンセラー「そのときの彼、を陽子さんにイメージの中で思い浮かべて
         もらいます。
         そして、その彼に、陽子さんから言いたいことや、
         伝えきれてきれていないメッセージを、
         あくまでイメージの中で、伝えてもらいます。
         そして、彼のイメージから、一歩ずつ距離をとってもらう、
         といったことをやっていきます。
         その中で、陽子さん自身に、自分の感情がどんな風に変化し
         ているか、その感情を感じてもらいたいと思っています。」
陽子さん「はい。」
カウンセラー「ここで、パンドラの箱に入っていたたくさんの感情が出てくる
         と思います。怒り、嫉妬、喪失感、無価値感。
         その感情を燃やしていくために、陽子さんの中にある、
         心の浄化機能、を使います。
         人は誰しも、そういう部分を持っていますので、
         それを引き出す誘導を入れていき、陽子さんが、
         いままで封印していた感情に触れることを怖れなくても
         よくなるようにしていきます。」
陽子さん「はい。」
 
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カウンセラー「その後、今の彼の話をしていきます。
         その段階では、陽子さんは今の彼との関係の中で自分が感じている感情について、
         整理しやすい状態になっていると思います。
         大体、そんなところですが、やってみますか?」
陽子さん「それをやったら、楽になれるんですか?」
カウンセラー「最終的に楽になるまでには、もしかしたら、少し時間がかかるかもしれません。
         ただ、それは、陽子さんの感情のあくまで一部を扱うことになるので、
         全ての感情がクリアになる、とはならないためですが、それでも、そのための、大きな一歩になります。
         心の痛みの部分に触れますので、そのときに、陽子さんにとっては
         たくさんの感情を再体験することになりますが、
         それだけの価値があるというのは、お約束できます。」
陽子さん「わかりました。お願いします。」
 
 
                        
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