ケース その2 「職場の人間関係」
Counseling 〜 カウンセリング 〜
2回目のカウンセリングでは、前回の続きの話を進めていくこととなった。 裕子さんの中でも、前回、話した内容について、記憶が曖昧な部分があったので、 最初は、その前回の話の内容の整理を行ったあと、 続きの内容として、お母さんの部分を扱っていくこととなった。
カウンセラー「今から、イメージを使った、カウンセリングの手法を使っていきます。
         私が、裕子さんに、こういうものをイメージしてください、とお願いしたり、どんな風に感じますか、と聞いたりしながら、
         裕子さんをサポートしていきますので、まずは、軽く目を閉じて、すこしリラックスしてもらってもいいですか?」
裕子さん「はい。」
カウンセラー「まずは、心の中でお母さんのことを思い浮かべてもらってもいいですか?」
裕子さん「はい。」
カウンセラー「裕子さんのイメージの中で、お母さんはどんな表情をしていますか?」
裕子さん「暗い表情です。」
カウンセラー「お母さんは何を感じていると思いますか?」
裕子さん「なんだろう。う〜ん。申し訳ない感じです。」
カウンセラー「罪悪感を感じてそうなイメージですか?」
裕子さん「それに近いと思います。辛抱、というか、黙っていろんなことを抱え
      ている感じです。」
カウンセラー「たった一瞬でも、笑顔になることは、なかったでしょうか?」
裕子さん「お菓子を作るのが上手で、子供の頃、おいしいって言ったら、嬉し
      そうにしてましたね。」
カウンセラー「イメージの中で、お母さんを誉めてもらってもいいですか?」
裕子さん「はい。」
カウンセラー「お母さんにしてもらったことで、嬉しかったことって、
         他に何かありますか?」
※画像はイメージです。
 
裕子さん「お弁当を作るのが上手で、クラスの友達に、おいしそうって言われたことがあります。
      なんか、ちょっと嬉しかったです。」
カウンセラー「イメージの中で、お母さんを誉めてもらってもいいですか?」
裕子さん「はい。」
カウンセラー「今、イメージの中で、お母さんはどんな表情をしていますか?」
裕子さん「う〜ん、よくわかりません。」
カウンセラー「暗い表情をしていますか?」
裕子さん「う〜ん、よくわかりません。」
カウンセラー「自分を責めていると思いますか?」
裕子さん「責めている・・・・。う〜ん。」
カウンセラー「お母さんが嬉しそうにしている時、一瞬でも、お母さんは自分で自分のことを責めていなかったと思いませんか?」
裕子さん「お母さんじゃないから、わからないです。」
カウンセラー「責めていなかったと思いますよ。自分で自分のことを責めながら、嬉しいって喜ぶのって、できないでしょ。
         私ってなんて駄目な人間なんだろう・・・嬉しい!」
裕子さん「あははっ!」
カウンセラー「無理でしょ?」
裕子さん「無理ですね。」
カウンセラー「嬉しそうにしているお母さんは、そんなに嫌いじゃないんじゃないですか?」
裕子さん「嫌いじゃないですね。あ・・・」
カウンセラー「今、何か気付きましたか?」
裕子さん「いや、わからないです。なんか・・・・、嫌いじゃないところもあるんだなって思いました。」
カウンセラー「反対に、自分で自分のことを責めているお母さんは、嫌い、というより、責めたくなりませんか?」
裕子さん「そうですね。」
カウンセラー「もしかして、裕子さんが嫌いなのはお母さん、じゃなくて、その自分で自分のことを責めている部分じゃないですか?」
裕子さん「・・・・・。そうですね。」
カウンセラー「今、何か気付きましたか?」
裕子さん「・・・・お母さんのこと、そんなに嫌いじゃないかもしれないです。」
 
※画像はイメージです。
カウンセラー「裕子さん。自分で自分のことを責めているお母さんのこと、
         許してあげませんか?」
裕子さん「・・・・・。」
カウンセラー「ずっと、責めていましたよね。お母さんが、そんなんだからって。
         ただ、大人になった裕子さんには、お母さんが、
         そこでどれだけ苦しんでいて、どうにもできない、
         ということが良くわかると思います。
         もちろん、だからこそ、嫌いになったのかもしれません。
         裕子さんが苦しんだのは、もしかしたら、お母さんのせい、
         かもしれません。
         それでも、もし、お母さんのことを許す、ということが
         できるのなら、それはお母さんにとって、最大の
         プレゼントになります。」
裕子さん「・・・・・。」
カウンセラー「もしかして、お母さんが、自分で自分のことを許したら
         いいのに、って思っていませんか?」
裕子さん「・・・・・思ってます。」
カウンセラー「そしたら、私も責めなくていいのにって」
裕子さん「そうですよ〜。」
 
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カウンセラー「じゃあ、裕子さんに聞きますが、自分で自分のことを許せますか?」
裕子さん「・・・・・。」
カウンセラー「できないでしょ?」
裕子さん「できないです。」
カウンセラー「お母さんにできると思いますか?」
裕子さん「思わないです。」
カウンセラー「お母さんが、自分で自分のことを、どうしても許せないって、わかりますか?
         もし、裕子さんが、お母さんのことを許すなら、それが、どれだけ嬉しいことか、わかりますか?」
裕子さん「それは、わかりますけど。」
カウンセラー「裕子さんにとって、お母さんを許す、というのは、今までの自分のものの見方や、価値観、
         そういうものが、大きく変わることになるかもしれません。
         ただ、裕子さんのそのこだわりよりも、お母さんのほうを選択してもらっても良いですか?」
裕子さん「・・・・・」
カウンセラー「今、どんなことを考えていますか?」
裕子さん「お母さんのことを許してもいいんですけど。なんか、それでいいの
      かなって。だって、許しちゃったら、ダメじゃないですか?」
カウンセラー「どうして、ダメ、だと思うんですか?」
裕子さん「お母さんが変わらないじゃないですか。許しても、お母さんはずっと
      そのままだと思う。」
カウンセラー「そうですよね。裕子さんは、お母さんに変わって欲しかった
         んですよね。そんなんじゃダメって。暗くしてちゃダメ。
         もっと、自分から話していかなきゃって。」
裕子さん「うん・・・。」
カウンセラー「それは、裕子さんがすること、とは思いませんか?」
裕子さん「・・・・・・うん。」
※画像はイメージです。
 
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カウンセラー「お母さんがもし変わっていたなら、裕子さんは、とっても楽だったと思います。
         ただ、お母さんには出来なかったんですね。
         裕子さんが変わっていくために、自分自身を責めるというやり方、全然上手くいかなかったですよね。
         お母さんも一緒です。
         裕子さんにとって、このやり方を手放していく必要があります。
         自分を責めても、一歩も前に進まなかったと思います。お母さんと同じように。
         人とつながっていこうというときに、自分を責めるという気持ちや、自己嫌悪は、それを難しくしてしまうからです。
         責めれば責めるほどに、人と繋がれなくなっていくんですね。
         今日、このやり方を手放しませんか?まずは、裕子さんからです。
         ただ、自分自身を許して、自分を責めるということを手放していく、ということは、とても難しいことかもしれません。
         それは、裕子さんがお母さんを許してないからです。
         まず、お母さんを許すことが求められてきます。
         だって、お母さんは許さないけど、私は私を許す、って、裕子さんできないでしょ?」
裕子さん「それは、できないですけど。う〜ん。」
カウンセラー「裕子さんが前に進むために、お母さんを許しませんか?
         お母さんのためじゃなくて、自分のために。」
裕子さん「・・・・・・・はい。」
※画像はイメージです。
カウンセラー「心のなかに葛藤は残っていると思いますし、
         ふに落ちないところや、納得いかない感覚もあ
         るかもしれません。それでも、OKです。ただ、今、
         イメージの中で、お母さんのことを思い浮かべて
         もらってもいいですか?」
裕子さん「はい。」
カウンセラー「今、お母さんはどんな表情をしていますか?」
裕子さん「なんか、悩んでいるような感じです。」
カウンセラー「自分を責めているような感じですか?」
裕子さん「はい。」
カウンセラー「お母さんは、どんなことで自分を責めてるんだと思いますか?」
裕子さん「え〜と、そうですね。なんだろ。」
カウンセラー「私って、ダメな母親、ダメな妻だなあって、そんな感じ
         じゃないですか?」
裕子さん「ああ、そうですね。」
 
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カウンセラー「お母さんに、イメージの中で、こう言葉をかけてもらってもいいですか?
         お母さんは、ダメな母親じゃないよ、って。」
裕子さん「・・・・はい。」
カウンセラー「今、お母さんはどんな表情をしていますか?」
裕子さん「首を横に振ってます。」
カウンセラー「そうですよね。ずっと、自分を嫌ってきたんです。そんな風に言われても、信じられないし、受け入れられないんです。
         裕子さんには、その気持ちがわかるんじゃないですか?」
裕子さん「・・・・はい。」
カウンセラー「お母さんに、イメージの中で、こう言葉をかけてもらってもいいですか?
         今まで自分を責めてきて、辛かったよねって。頑張ってきたよねって。」
裕子さん「・・・・・。」
カウンセラー「今、お母さんはどんな表情をしていますか?」
裕子さん「・・・・首を横に振ってます。泣いてます。」
カウンセラー「イメージの中で、泣いているお母さんのことを抱きしめてもらっても良いですか?」
裕子さん「・・・・・。」
カウンセラー「今、お母さんはどんな表情をしていますか?」
裕子さん「・・・・・泣いてます。」
カウンセラー「お母さんが、裕子さんにそんな風にしてもらって、とっても嬉しい、っていうのはわかりますか?
         ずっと責められていると思ってきたんです。私ってなんてダメなんだろうって。
         自分で自分を責めているのと同じように、周りからも責められているって思ってきたんです。
         裕子さんも一緒ですよね?」
裕子さん「はい。」
 
 
                        
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