ケース その2 「職場の人間関係」
〜 クライアントのプロフィール 〜
裕子さん(仮名)は、20代後半の独身女性。転職して新しい職場に来てから3年。仕事自体は好きだが、周囲の人たちとはあまりなじめない。人付き合いは苦手なタイプ。
〜 カウンセリング 〜
裕子さんからの相談内容は、職場での人間関係について、話を聞いてもらいたい、ということだった。ホームページの中身も色々みて、心理学の話にも興味があるので、その話も聞きたいという要望もあった。
カウンセラー
「相談内容は、上司ともっと上手くやっていきたい、ということでしたよね。メールで読んだ内容だと、自分だけ職場で孤立している、ということだったんですけれども。」 裕子さん
「私だけ扱いが違うような気がしてて、なんか。」 カウンセラー
「どんなことがあったんですか?」 裕子さん
「何がって言われると困るんですけど。私だけ違うっていう感じです。」 カウンセラー
「そういう雰囲気を感じられているんですね?」 裕子さん
「雰囲気っていうか。なんか、違うんです。」 カウンセラー
「なるほど・・・・・。そうですね。まずは、お話を色々聞かせてもらいたいと思っているんですけれども、では・・・、最初に、裕子さんの今のお仕事についてですが、大雑把でいいので、どんなことをされているのか、教えてもらっても良いですか?」
仕事の内容を切り口にして、そこから裕子さんに職場の雰囲気や裕子さんを取り巻く状況について説明してもらうと、 半年前に今の職場に転職してきたが、なかなか周りになじめない、ということのようだった。
ただ、転職した理由を聞いてみると、人間関係で上手くいかなかった、ということだった。

 


※画像はイメージです。
裕子さん
「私が悪いのかもしれないなって。」 カウンセラー
「どうして自分が悪いって思うんですか?」 裕子さん
「・・・・・・おとなしいし。」 カウンセラー
「積極的に、人の輪の中に入っていくっていうのは難しいっていう感じでしょうか?例えば、会社での飲み会とか、そこにいる時間が苦痛、というのはないですか?」 裕子さん
「あ、そうです。苦痛です。」 カウンセラー
「そういうときって、もう、めんどくさい付き合いとか置いといて、早く帰っちゃいたいですよね?」 裕子さん
「うふふ。そうですよね。」
まずは、上司との人間関係について聞いていくと、自分以外の部下とは仲良くやっている様子なのに、自分に対してだけ少し距離をとられている感じがする、とのことだった。
裕子さん
「課長は、自分の部下が仕事で失敗したことがあると、だいたい厳しく怒るんです。でも、私に対しては、なんか、言ってもムダ、と思われているみたいです。」 カウンセラー
「怒られないんですか?」 裕子さん
「あんまり言われないですね。だから、あきれられてるのかなって。」 カウンセラー
「冷たくされるような感じなんでしょうか?」 裕子さん
「なんか冷静です。淡々と指摘されて、はい、もう席戻って、っていう感じで。」 カウンセラー
「なんでだと思いますか?」 裕子さん
「見下されているんだと思います。使えない部下だなって。」 カウンセラー
「馬鹿にされているような感じがするんですね。」 裕子さん
「でも、悔しいんで、言われたことだけは、同じ文句は言われないようにしているんですよ。他の人は、みんなけっこういい加減なのに。」 カウンセラー
「たくさん言わなくてもわかる、と思われている、ということはないですか?」 裕子さん
「そうなんですかね・・・。でも、課長から出ている雰囲気が、もう、私と関わらないようにしよう、っていう感じなんですよ。だから、うっとうしい、って思われているのかなって。」
話を聴いていくと、上司である課長に対してだけではなく、職場にいる同僚に対しても、同じような感じの関係にあるようだった。
劣等感が強く、周りから見下されているように感じていて、心の中では、自分で自分のことをなかなか認めることができない、という状態になっているようだった。
また、それが原因で、周囲に対して、頑なな態度をとってしまったり、仕事に対する考え方も、柔軟性を欠いたものとなってしまい、批判的な言動が多くなって、周囲をそれで遠ざけている、という状況もあるようだった。

 


※画像はイメージです。
裕子さん
「・・・・でも、私が悪いのかもしれないなって。」 カウンセラー
「自分のことが嫌いですか?」 裕子さん
「嫌いです。・・・・大嫌いです。」 カウンセラー
「どんなところが嫌いですか?」 裕子さん
「おとなしいところ。笑顔じゃないところ。頭が悪いところ。かわいくないところ。人と上手くしゃべれないところ。男の人が苦手なところ。すぐ人のせいにするところ。まだまだあるんですけど。」 カウンセラー
「自己嫌悪、というのは人それぞれですが、底なしのように、たくさん出てくるものかもしれません。ほかには、どんなものがありますか?」 裕子さん
「う〜ん。すぐ落ち込むところ。こういうことを相談できる友達がいないところ。・・・言いたくないことは、言わなくてもいいですか?」 カウンセラー
「はい。言える範囲だけで、大丈夫ですよ。」 裕子さん
「う〜ん。不器用なところ。本気で人のことを想ってあげられないところ。冷たいところ。ずるいところ。怠け者なところ。汚いところ。嫉妬深いところ。ウジウジしているところ。人が苦手なところ。あと、じゃあ・・・、う〜ん、このぐらいで・・・」
カウンセラー
「はい。OKですよ。自己嫌悪は、自分で自分にダメ出しをしている、という部分ですが、本当の私を知ったら、周りの人はもっと私を嫌いになるって思ったりしませんか?」 裕子さん
「思います。だから、全部は言わなかったんです。」 カウンセラー
「ここで、もし、自分に似た人、例えば、自分と同じように、嫉妬深い、という人を見たら、なんて思いますか?」 裕子さん
「え・・・・。う〜ん。」 カウンセラー
「もしかして、嫌いになったりしませんか?」 裕子さん
「え。はい。」 カウンセラー
「自己嫌悪って、こんな風に、自分も人を嫌いになるし、本当の自分が知られないように、自分を隠したくなるし、自分の周りに壁を作ってしまうものになっちゃうんですね。」 裕子さん
「それは、わかっています。でも、なんていうか・・・。ダメじゃないですか?」 カウンセラー
「ダメなものはダメ、そんな風に思うかもしれませんね。ただ、ここを変えていくことはできますよ。自己嫌悪の部分。ここがダメって決めているのは、自分自身、なんですね。 他の誰かが、裕子さんに対して言っていることは、変えることは難しいかもしれません。ただ、自分で決めていることは自分で変えることができます。もし、この自分が嫌い、っていうのを止めることができるとしたら、やってみたいですか?」 裕子さん
「どうやってやるんですか?」 カウンセラー
「そうですね。おおまかに言うと、自己嫌悪の部分を変えていく、と心の中で選択して、その部分の見方を変えて、自分を好きになっていく・・・・・。このプロセスを踏んで、この自分が嫌いっていう部分を扱っていく、という感じです。 やってみるとわかると思いますが、やることは別に特別なものじゃないですよ。」 裕子さん
「はい。」 カウンセラー
「ただ、自分が嫌い、という部分を変えていくというときに、心の中に、いろいろと抵抗感が出てくるかもしれません。 裕子さんにとって、自分自身や周囲にいる人たちへの見方を変えたり、今まで、嫌っていた誰かを、受け入れるという部分を扱うかもしれません。ただ、この部分を変えていくためには、そこを通り抜けていくことが求められてきます。 自分の嫌いな部分、今、たくさん言ってくれましたよね? 裕子さんのその部分、誰よりも嫌っているのは、裕子さん自身です。そのことで、誰よりも苦しんでいるのは、裕子さん自身だと私は思っています。もし、この部分を手放していくことで、裕子さん自身が苦しんでいる人間関係の部分、そこを変えていくことができるとしたら、やってみたいですか?」 裕子さん
「はい。お願いします。」

 


※画像はイメージです。
カウンセラー
「まずは、裕子さんの、ご両親の話を聞かせてもらいたいんですけれども、お父さんは、どんな人ですか?」 裕子さん
「なんでしょう・・・。いつも疲れていましたね。仕事で疲れていたみたいです。家の中では、黙ったまま、一人の世界に入っているみたいでした。」 裕子さんの父親の話を聴いていくと、仕事で疲れて帰ってくることが多く、あんまり裕子さんにアレコレ構ってくれる人ではないようだった。
子供の頃、たまに遊びに連れて行ってくれるときがあって、そのときだけは優しいが、それ以外、仕事で疲れているときは、ほとんど家族のほうに目を向けない、という人のようだった。
裕子さん
「父親のことは嫌いではないですけど、なんか、ほっとかれてるなあ、って思っていました。」 カウンセラー
「あんまり、私の相手をしてくれない、っていう感じでしょうか?」 裕子さん
「はい。子供の頃はそんな風に思いました。」
カウンセラー
「なるほど・・・・・。お母さんは、どんな人ですか?」 裕子さん
「真面目でおとなしいですね。なんか、影が薄い・・・・ですね。あんまり、しゃべらないです。」 カウンセラー
「お母さんを見て、どんな風に思いますか?」 裕子さん
「別に・・・・。ちょっと、うっとうしいって思いますね。」 カウンセラー
「何か、色々と言われるんですか?」 裕子さん
「あんまり、こっちには関わってきませんね。何にも言われないです。」 カウンセラー
「どうして、うっとうしいって思うんですか?」 裕子さん
「なんか、見ているだけで、ちょっと、うっとうしいですね。のろいというか、暗いというか。」 カウンセラー
「もしかして、自分と似ているっていう風に感じませんか?」 裕子さん
「だから、嫌なんですよ。なんか暗いなあって。」
話を聴いていくと、裕子さん自身が自分の嫌いなところとしてあげていた部分のほとんどをお母さんも持っているようだった。
裕子さんの心の中の自己嫌悪の象徴として、お母さん、というのがあり、あんなふうになったら、誰からも愛されないし、誰からも相手にされない、という風に感じている部分が裕子さんの中にあり、それが自己嫌悪のおおもとになっているようだった。
カウンセラー
「自己嫌悪している部分、自分で自分のことを嫌っている部分があると、周りも自分を嫌うように思えてしまったりします。 これを手放したら、人間関係が楽になれますよ、という話を私がしたと思いますが、自分を嫌っているのと同じくらい、ほかに裕子さんが嫌っている人がいるとしたら、誰だと思いますか?」 裕子さん
「・・・・お母さんですか?」 カウンセラー
「そうですね。裕子さんのお母さん。真面目でおとなしい、そういう部分を持った人ですが、お母さんを嫌うんじゃなく、受け入れることができたときに、裕子さん自身も、自分で自分を嫌わなくても良くなるんですね。 お母さんは、裕子さんにとって、心の中で拒絶している人、かもしれません。ただ、お母さんが大好きだった時期もあったと思います。いつ頃から、距離を取るようになったんですか?」 裕子さん
「・・・・・小学校くらいのときからだと思います。学校でいじめられるようになって。そのときから、家族ともあんまりしゃべらなくなって。自分で自分のことが嫌になって。なんとなく、お母さんとも一緒にいるのが嫌になって。」 カウンセラー
「それまでは、自分のことは嫌いじゃなかったですか?」 裕子さん
「嫌いでした。ずっと嫌いかもしれません。」 カウンセラー
「お母さんのことは嫌いじゃなかったですか?」 裕子さん
「・・・・・好きではなかったです。」 カウンセラー
「なんでだと思いますか?」 裕子さん
「わかりません。」

 


※画像はイメージです。
カウンセラー
「お母さんは家の中で、影が薄い、暗い、と言われていましたよね。お父さんとお母さんの仲は良かったですか?」 裕子さん
「仲がいい、という感じではないです。」 カウンセラー
「お父さんとお母さんの間には、壁があるような感じでしょうか?」 裕子さん
「ありますね。お母さんは黙っていて、お父さんはあんまり関わらないようにしているような感じです。」 カウンセラー
「それを見て、裕子さんはどんな風に感じていましたか?」 裕子さん
「・・・・・いいようには思っていませんでした。居心地が悪かったです。」 カウンセラー
「小さい頃の裕子さんは、それを、自分のせいだ、と感じたりはしなかったでしょうか?」 裕子さん
「感じてました。」 カウンセラー
「どうしてだと思いますか?」 裕子さん
「私もお母さんみたいにおとなしいから、明るくすることができないなあって。」 カウンセラー
「もしかして、自己嫌悪はそこから来ていませんか?」 裕子さん
「わかりません。」
カウンセラー
「小さい頃の裕子さんは、お父さんとお母さんが大好きだったんじゃないかなあ、と僕は思っています。ただ、お父さんとお母さんの間に壁がある、というのを感じて、そこに無力な自分っていうのを、いつも感じていた。 もし、この壁を取り払うことが自分にできたら、どんなにいいだろうって。どんなに、家族が明るくなって、温かみがでるだろうって。ただ、小さい頃の裕子さんにはそれができなかったんですね。 なんて、自分は悪い子なんだろうって。それで、自分で自分のことを心の中で罰したんですね。 ごめんなさいって。お父さん、お母さん、ごめんなさいって。それは裕子さんの中に、とても優しいハートがあるから。お父さんとお母さんの幸せを願うハートがあるからなんですね。ただ、小さい頃の裕子さんは、それで、自分で自分に×をつけてしまった。私はダメな子なんだって。 ただ、私は思います。本当にダメな子だったのかなって。 小さい頃の裕子さんは、そのとき、何も出来なかったかもしれないけれども、心の中では一生懸命だったんじゃないかなって。そうじゃなかったですか?」 裕子さん
「ごめんなさい・・・。」 カウンセラー
「どうして謝るんですか?」 裕子さん
「ごめんなさい。だってなんか。あんなに2人が苦しんでいるのに、なにも出来なくて。みんな笑ったり、子供ってアイドルじゃないですか。私、何にもできなくて。」 カウンセラー
「裕子さんは、とっても感受性が豊かなんだと思いますよ。だから、2人の間に壁があるだけじゃなく、そのことで、2人が苦しんでいることも、裕子さんにはわかっていたんですね。だから、なんとかしてあげたかった。それは、裕子さんの中に、とっても優しいハートがあるからです。 今、裕子さんにとって、自分で自分を嫌って、お母さんのことも嫌っているハートがありますが、裕子さん、知っていたんじゃないですか?お母さんも、自分で自分のことを嫌っているって。 だから、今の裕子さんと同じように、お母さんも身動きができなかったんですね。お母さんも同じことを感じていたんです。私はなんて駄目なんだろうって。自分で自分のことを責めるハートで一杯になっていて、お父さんのほうに近づいていくことができなかったんですね。 裕子さんには、そのお母さんの気持ち、わかりますよね。だって、自分も同じなんだから。もし、自分で自分のことを嫌って、身動きできなくなっているお母さんのことを助けてあげることができるとしたら、助けてあげたいですか?」 裕子さん
「そんなこと、できないです。」 カウンセラー
「もし、できるとしたら、です。もし、裕子さんにその力があったとしたら、助けてあげたいですか。」 裕子さん
「・・・・・助けてあげたいです。」
ここで、カウンセリングの時間がだいぶ押していたため、裕子さんとの話の中で、家族の話や、自己嫌悪の話については、次回のカウンセリングの中で扱っていく、ということとなった。
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